« February 2007 | Main | August 2008 »

「食料自給率」が何たるかを知らずに鯨肉生産による食料自給率に疑問を抱く哀れなお方々の本末

 某国への2年間にわたる出征から帰国し一ヶ月が経とうとしてます。そして当ブログの更新に至っては半年近くも更新していなかったのでこのブログの存在自体、危うくなっているものと管理者本人である私が認識しているのはいうまでもありません(--;)。なにしろ出征先では日本ほどネット環境が充実しているわけでもなく、更新するにしても相当に難しいというのが現状で書きたい記事があってもネット環境によってなかなか書けないというのが現状でもあったわけなんですよね(--;)。上手くネットつなげてもすぐにルーターが故障して保障についても日本に遠く及ばずなのですからな。
 そして早速、出征先から帰国しても向こうに2年間もいたので生活環境がガラッと変わるとこんどはこの生活環境に慣れるためのリハビリときました。外国の田舎町から先進国の中心都市に来たものですから、このリハビリに体力を使う使うはで、あっという間にブログの更新も行わずに一ヶ月が経って現在に至るというわけです。
 では、早速本題です。鯨肉は近年、国民の鯨肉に対する強い要望の元、調査捕鯨の拡大とともに副産物の鯨肉の生産量も上がり価格も以前に比べて安くなってきました。少しずつではありますが商業捕鯨復活への道が開かれていることを証明しており、食料自給率の向上へも大きな貢献ができるとして日本捕鯨の未来へ明るい希望が見えてまいりましたが、そんな捕鯨に食料自給率についてとてつもない的外れな計算方法で鯨肉による食料自給率に笑わせてしまうほどお粗末な批判をなさるブログ記事が見つかりました。
駒沢亭日乗
捕鯨で食料自給率はアップするか?
http://komazawa.blogzine.jp/diary/2007/06/post_c208.html

調査副産物(調査捕鯨によって得られた鯨肉)は合計5433.6トンであるという。(中略)これを日本の人口1億2000万人でざっくり割ると、1人あたり年間で45.3グラムの鯨肉を得た計算だ。「1年間で刺身3切れぶん」といったところか。一方、日本の食肉総輸入量は1996年の記録で約200万トン(内訳は牛肉63万トン、 豚肉65万トン、 鶏肉56万トン。これに羊肉、馬肉、内臓肉、加工製品が加わって合計約200万トン)。日本人1人あたり、年間で29キログラムの食肉(うち、輸入肉は16.7キログラム)を食べている計算になる。
駒沢亭日乗はどうも食料自給率がなんたるかを計算上理解していらっしゃらないようです。日本は大東亜戦争中の戦時下などに見られる全面戦争中の国でもなければ北朝鮮のような共産主義国家でもないので食料は配給制度によって消費されるわけではなく、自由貿易をはじめとする市場などを通して消費者が購入する形で消費されます。よってこの食料がすべて国民にカロリー計算をした上で無駄なく配給されているならば合計約200万トンの肉がそのまま肉かあるいは蛋白源の自給率100%となるでしょう。しかし、悲しいかな。これはただ森林をぶっ潰すか鶏糞や肉骨粉というとんでもない飼料を与えて馬鹿みたいに大量に生産された安い肉を含む大量の肉が市場に流れているというだけでこれがそのまま食料自給率になるというわけではありません。
 では、食料自給率というのはどのようにして計算されているかといえば
1.生産重量
2.カロリーベース
3.経済(生産額)
という形で計算されます。このうち、生産額による計算は今回取り上げる駒沢亭日乗氏の記事では経済的なことが取り上げられていないので省略します。では、生産量から見た食料自給率ですがこの計算は

国内生産量/国内消費仕向け量 で計算されます。
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/jikyuuritsu/011.html

①おもさで計算 食料自給率 国内生産量、輸入量など、その食品の重さそのものを用いて計算した自給率の値を「重量ベース自給率」といいます
。 この場合、駒沢亭日乗氏の計算した肉の国内生産重量である200万トンが計算上使われます。しかし、これはあくまでも国内生産量を国内消費し向け量で割りだした数字であってこの計算で言うと鯨肉は貿易が禁じられているためすべて国内生産量となり、この計算からすると鯨肉は食料自給率100%となってしまい、カロリーベースで計算されている食料自給率40%をはじめとするカロリー計算方法では駒沢亭日乗氏の計算した肉の国内生産重量である200万トンも鯨肉の自給率の貢献度ではまったく比較できなくなってしまうわけです。

肉の自給率は53%にあらず、10%未満

 食料自給率40%がカロリー計算で算出されている以上、鯨肉、および畜産物はカロリーベースに基づいて計算されるべきなのですがなぜだか駒沢亭日乗氏は国内消費し向け量だけを比較して鯨肉の食料自給率向上への期待を批判しています。そりゃ、品質、将来の持続的な生産の安定性や安全に対する考慮もせずにただ値段を下げて売ることを目的にバカスカ作った肉を捕鯨対象種を拡大したとはいえ厳重な資源調査と持続的利用の目的とする捕鯨によって生産された肉では生産量や国内紙向け量に大きな差が出るのは当たり前であることは少しでも考えればわかりきっていることだと思います。しかし、食料自給率となるとカロリーベースによる食料自給率向上における貢献度が重要となってくるのです。
 では、カロリーベース食料自給率はどのようにして算出されるのか
カロリーベース食料自給率の算出方法
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/jikyu/local/ssr.pdf

カロリーベースの総合食料自給率の計算方法は以下のとおりとなっている。
① 品目ごとに1人1日当たり供給純食料(g)を熱量(kcal)に換算し(品目ごと
の供給熱量)、これを合計する(=国民1人1日当たり供給熱量=2,562kcal)。
② 品目ごとの供給熱量に品目ごとの供給熱量自給率を乗じて国産熱量を求め、
これを合計する(=国民1人1日当たり国産熱量=1,013kcal)。
③ ②を①で割ることにより、カロリーベースの総合食料自給率を求める。
と、このようにして算出されます。しかしながら、これが乳製品をはじめとする畜産物では、これに飼料自給率が計算に入りますので肉の生産に飼料が必要である以上、より正確な食料自給率の算出方法とみられ、これがカロリーベースにおける40%を算出していることから現在、食料自給率を算出している上で一番、正確な食料自給率算出方法と考えるべきでしょう。
また、国産熱量の算出に当たっては、畜産物については飼料を輸入に依存する部分は輸入品として扱っているため、畜産物の自給率に飼料の自給率を乗じて算出しており、国産であっても飼料を自給している部分のみカロリーベースの食料自給率に反映している。
では、この計算方法で畜産物の自給率を計算すればどれほどの食料自給率が算出されるのでしょうか。まず、鯨肉を除く肉の重量ベース自給率が55%なのでこれに飼料自給率11%を掛け合わすことになります。このばあいは55×0.11となりますので、この結果、提供できるカロリーはわずかに6kcalとなり、この結果、品目別供給熱量自給率95%の米の570kcalの1/9以下の自給率である6%となってしまうわけです。だからこそ、これだけ肉や乳製品を大量に生産しているにもかかわらず、カロリーベースで統合すると40%という悲しい数字ができてしまうわけです。
 鯨肉の場合は当然、飼料を使わないので品目別供給熱量自給率は100%ととなります。では、ここで鯨肉のほうはどうかといえば、単純に低脂肪、高たんぱくでカロリーが少ないので100gあたり106kcalとなり、駒沢亭日乗氏の記事によれば年間5433.6トンの鯨肉を生産していることからこれをkcal/100gでかけてから年間日数である365日と1億2000万人の数字で換算すると一日あたりの提供熱量は13.15kcalとなり、この計算からすると肉類の国産熱量6kcalの倍以上のカロリーを提供できる計算となりました。
 これが品目別になると以下のような計算となりました。
豚肉4kcal
牛肉4kcal
鶏肉3kcal
鶏卵6.3kcal
となりました。すべて供給熱量は鯨肉の半分にも至らなかったことでこれらを大量に消費することがいかに食料自給率40%という先進国中最も低い自給率に貢献していることがお分かりかと思います。なお、乳製品は畜産物で唯一鯨肉を上回るカロリー値である47kcalを出していますがもともと脂肪の多いバターや骨そしょう症の原因にすらなる牛乳など、近年の栄養学から過剰摂取が疑問視されている商品が多いのでこれらを大量に生産して過剰に摂取することはあまりお勧めできないことかと思います。なお、この計算は品目別データ(生産量、消費量、輸出入量等)にある、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、そして牛乳および乳製品の平成17年度における1日あたりの熱量および、Ⅰ.食料自給率とはにある表1 畜産物のカロリーベースの自給率(平成15年度)に表記された品目別自給率と 飼料自給率を元に算出したものです。
 カロリーベース自給率から見ると鯨肉が現在においてさえどれほど食料自給率の向上に貢献できるか見てわかりますし、国内仕向け量や消費量をいくら計算したところで肝心の国産熱量や生産性を検証しなければいかに生産量の身が一方的な見方だかお分かりいただけたかと思います。
商業捕鯨が再開されて仮に現在の10倍(ミンククジラ1万700頭、ナガスクジラ100頭、ニタリクジラ500頭、イワシクジラ1000頭、マッコウクジラ100頭)を捕ることができたとしても1人あたり453グラムで、年間消費量の1.6%。輸入量に対して2.7%に留まる。
 一日における提供熱量だ著131.5kcalで乳製品の3倍近くにもなりますねー。肉に至っては30倍か40倍、鶏卵も20倍とかなり食料自給率に貢献できますな。いや、米の5分の1近くになりますから肉の食いすぎになりますよ、これ。
日本捕鯨協会によると、鯨肉は「高タンパク、低脂肪、低カロリー」であるという。なので牛ヒレ肉と同じ100グラム133キロカロリーとして計算すると、現在約40%である日本の食糧自給率(カロリーベース)を0.06%アップさせる計算だが、これはもう、ほとんど誤差の範囲だ。
なるほど、駒沢亭日乗氏の国では飼料自給率100%かあるいは飼料などまったくやらずとも育つ肉牛が飼育されているのか!ぜひ、その国、あるいは牛を案内してほしいですな!現
在の100倍(ミンククジラ10万7000頭、ナガスクジラ1000頭、ニタリクジラ5000頭、イワシクジラ1万頭、マッコウクジラ1000頭)を捕獲してようやく年間の食肉消費量の16%を賄える計算
100倍となると1315kcalで570kcalである米を上回る量ですぜ!こりゃ低炭水化物ダイエットなんてレベルじゃない!食料自給率以前にそんなにたくさん肉をバカスカ食べるなんてかえって体に毒ですし、日本人の長い腸も肉食獣並みに短くなってしまう(--;)
むしろ国際的な捕獲(漁獲)制限の枠組みを壊すことによって、各国による乱獲(というか実力を伴った水産資源の争奪戦)を誘発する怖れがあるし、日本に対する風当たりが強くなる怖れもある。貿易制限や経済制裁が行われる可能性も否定できない。
これらを総合的に判断すると、日本がとるべき国家戦略として、捕鯨再開はあまり賢い選択ではないような気がする。コンビニ等で棄てられる食料のムダを削減したり国内の畜産を振興させたほうが、食料自給率の上で好ましい結果が得られるのではないだろうか。
国際争奪以前に南氷洋で捕鯨を行える設備と人員を確保しているのは現在、日本、ノルウェー、アイスランドくらいのもので、南氷洋、北西太平洋での鯨類に関する研究データを確保しているのは日本だけですから実質上、日本の力なくして資源の争奪には出られないと思いますな。ましてや捕鯨には砲手などの乗組員の技術育成、船団の確保、管理維持と膨大なコストと時間が必要なことから決定してから即座にはじめるような代物じゃなく貿易制限や経済制裁なんかやろうものならそれこそWTO違反でそっちの国のほうが風当たりが強くなりますよ。ましてや日本という技術、貿易大国では。下手するとノルウェーやアイスランドも敵に回すことになるかもしれませんしね。ましてや日本の研究成果が入ってこないのですからIWCなどの科学委員会の権威、権力の失態、衰退、および鯨の新たなる研究成果が入手できないということから鯨類研究においてむしろ、日本を追い出した国々の風当たりが強くなる可能性だって十分にありますよ。日本をはじめとする20各国以上のIWC加盟国が捕鯨賛成国だってことを見逃しちゃいけませんな。
 それにコンビニ弁当はコンビに弁当、鯨肉は鯨肉。ぜんぜん違う分野のことを取り上げては食料自給率が何たるかをわかっていない証拠ですな。カロリーベースによる自給率と流通、消費制度はまったく違うものです。畜産だって復興させてもカロリーベースの時点で飼料が輸入に頼っている現状じゃ、畜産よりもまずは農業、漁業の改善、復興が先ですよ。捕鯨はそういう点で見事に当てはまっていることと断言します。
オージービーフのハンバーガー、アメリカ産のポテト、ブラジル産のオレンジジュースをファーストフードで安く飲食している人に「食料の自給率アップを!」と力説されても、説得力に欠ける。まず「あなた自身」が、高くても国産の農作物を買う消費者になることだ。でなければ輸入食材が売れ続け、食料自給率は低いままとなる。
それ以前に畜産物がなんで育てられているのかという現状を把握していない貴殿が言っても説得力がまったくないということだけ指摘しておきましょう。

banner.png

| | Comments (0) | TrackBack (2)

« February 2007 | Main | August 2008 »